美しい山々が連なる景色、澄み切った湖の水面、手つかずの自然が残る森林…日本には息を呑むような絶景スポットが数多く存在します。
そんな日本の自然を守り、楽しむための「公園」には、国立公園、国定公園、国営公園という3つの種類があることをご存知でしょうか?
「国立公園と国定公園の違いって何だろう?」「国営公園はどんな特徴があるの?」と疑問に思ったことはありませんか?
この記事では、20年以上にわたり日本全国の公園を訪れてきた筆者が、それぞれの公園の違いや特徴、魅力的なスポットまで徹底解説します。
これを読めば、次の旅行計画がより充実したものになるでしょう。
国立公園・国定公園・国営公園の基本的な違い
まずは国立公園、国定公園、国営公園の基本的な違いについて解説します。
これら3つの公園は、設置目的や管理体制、規模など様々な点で異なっています。
それぞれの特徴を理解することで、訪れる際の心構えや楽しみ方も変わってくるでしょう。
国立公園とは
国立公園は、自然公園法に基づいて、日本を代表する優れた自然の風景地を保護し、利用の促進を図ることを目的として指定された地域です。
環境大臣が指定し、国(環境省)が管理を行っています。
2023年現在、日本には34の国立公園があり、その総面積は日本国土の約5.8%を占めています。
国立公園の最大の特徴は、日本を代表する傑出した自然景観を有していることです。
富士箱根伊豆国立公園や大雪山国立公園など、日本を代表する壮大な自然景観を楽しむことができます。

国定公園とは
国定公園は、国立公園に準ずる優れた自然の風景地として指定された地域です。
環境大臣が指定しますが、管理は都道府県が行うという点が国立公園との大きな違いです。
2023年現在、日本には56の国定公園があり、その総面積は日本国土の約3.7%を占めています。
国定公園は国立公園ほどの知名度はないものの、地域の特色ある自然景観を楽しめる場所として人気があります。
明治の森高尾国定公園や秩父多摩甲斐国立公園など、都市部からもアクセスしやすい国定公園も多くあります。
国営公園とは
国営公園は、都市公園法に基づいて設置される大規模な都市公園で、国(国土交通省)が整備・管理を行っています。
2023年現在、日本には17の国営公園があります。
国営公園の最大の特徴は、レクリエーションや文化活動の場として整備されていることです。
国立公園や国定公園が自然保護を主な目的としているのに対し、国営公園は人々の憩いの場として様々な施設が整備されています。
国営昭和記念公園や国営ひたち海浜公園など、季節の花々や多彩なアクティビティを楽しめる公園として人気を集めています。
国立公園の特徴と魅力
国立公園は日本の自然保護制度の中心的存在であり、その特徴と魅力について詳しく見ていきましょう。
国立公園の指定基準と保護体制
国立公園に指定されるためには、「我が国の風景を代表するに足りる傑出した自然の風景地であること」という厳格な基準があります。
環境省の調査によると、国立公園内の土地は約40%が国有地、残りが公有地や私有地となっています。
国立公園内では、自然環境を保全するために「特別保護地区」「特別地域」「普通地域」という区分が設けられ、それぞれ規制の厳しさが異なります。
特に特別保護地区では、学術研究以外の動植物の採取が禁止されるなど、最も厳しい保護措置が取られています。
このような厳格な保護体制により、国立公園は貴重な自然環境を維持しているのです。
代表的な国立公園とその見どころ
日本を代表する国立公園とその見どころをいくつか紹介します。
富士箱根伊豆国立公園は、日本のシンボルである富士山を中心に、箱根の温泉や伊豆半島の海岸線など多様な景観を楽しめる国立公園です。
特に富士山からの日の出(ダイヤモンド富士)は、多くの写真愛好家が集まる絶景スポットとなっています。
大雪山国立公園は、北海道に位置する日本最大の国立公園で、広大な高山植物の群落や原始的な森林景観が魅力です。
7月から8月にかけての高山植物の開花期には、色とりどりの花々が山々を彩ります。
尾瀬国立公園は、本州中央部に位置し、日本を代表する高層湿原である尾瀬ヶ原と尾瀬沼が有名です。
6月のミズバショウ、7月のニッコウキスゲなど、季節ごとに異なる植物の風景を楽しむことができます。
国立公園での楽しみ方
国立公園では、自然を満喫するための様々なアクティビティを楽しむことができます。
トレッキングやハイキングは国立公園を楽しむ最も一般的な方法で、整備された遊歩道を歩きながら雄大な自然を体感できます。
初心者向けの短時間コースから上級者向けの本格的な登山コースまで、様々なレベルに対応したコースが用意されています。
バードウォッチングや野生動物観察も国立公園ならではの楽しみ方です。
知床国立公園ではヒグマやシマフクロウ、屋久島国立公園ではヤクシカやヤクザルなど、その地域特有の野生動物を観察することができます。
また、多くの国立公園では、ビジターセンターが設置されており、その地域の自然や文化について学ぶことができます。
レンジャーによるガイドツアーに参加すれば、より深く国立公園の魅力を知ることができるでしょう。
国定公園の特徴と魅力
国定公園は国立公園に準ずる自然の風景地として、独自の魅力を持っています。
国定公園の指定基準と管理体制
国定公園は「国立公園に準ずる優れた自然の風景地」という基準で指定されます。
国立公園と同様に環境大臣が指定しますが、管理は都道府県知事が行うという点が大きな違いです。
この管理体制の違いにより、地域の実情に合わせたきめ細かな保全と利用の促進が可能となっています。
国定公園内でも「特別地域」「普通地域」という区分があり、それぞれ規制の厳しさが異なります。
ただし、国立公園に比べると全体的に規制は緩やかで、地域の産業活動との調和を図りながら自然保護が行われています。
代表的な国定公園とその見どころ
日本各地にある国定公園の中から、特に魅力的なスポットをいくつか紹介します。
明治の森高尾国定公園は、東京都八王子市に位置し、都心から約1時間でアクセスできる身近な自然公園です。
高尾山を中心とした豊かな森林景観が魅力で、四季折々の自然を楽しむことができます。
特に秋の紅葉シーズンは多くの観光客で賑わいます。
越前加賀海岸国定公園は、福井県と石川県にまたがる海岸線が美しい国定公園です。
断崖絶壁と青い海のコントラストが見事で、東尋坊や和倉温泉など観光地としても人気があります。
秩父多摩甲斐国定公園は、関東山地の山岳地帯を中心とした国定公園で、奥多摩の渓谷美や三頭山の原生林など多様な自然環境が魅力です。
ハイキングやキャンプ、渓流釣りなど様々なアウトドア活動を楽しむことができます。
国定公園での楽しみ方
国定公園では、国立公園と同様に自然を満喫するアクティビティを楽しむことができますが、より地域の文化や産業と結びついた体験ができることが特徴です。
地元のガイドと一緒に歩く自然観察ツアーでは、その地域ならではの植物や野生動物について詳しく学ぶことができます。
また、多くの国定公園では地域の伝統文化や産業と連携したエコツーリズムが盛んです。
例えば、越前加賀海岸国定公園では伝統的な漁法を体験したり、地元の海産物を味わったりすることができます。
さらに、国定公園周辺には温泉地が多く点在しているため、自然散策と温泉を組み合わせた癒しの旅を楽しむこともできます。
国営公園の特徴と魅力
国営公園は国立公園や国定公園とは異なり、レクリエーションや文化活動の場として整備された都市公園です。
国営公園の設置目的と管理体制
国営公園は都市公園法に基づいて設置される大規模な都市公園で、以下のような目的を持っています。
一つ目は、大都市圏における良好な生活環境の保全や創出です。
二つ目は、地方における主要な観光資源となる文化財や優れた景観を保存・活用することです。
三つ目は、我が国の歴史・文化に関する記念事業や国家的な記念事業として設置されることです。
国営公園は国(国土交通省)が整備・管理を行いますが、実際の運営は民間企業や団体に委託されていることが多いです。
これにより、効率的な管理運営と多様なサービスの提供が可能となっています。
代表的な国営公園とその見どころ
日本各地にある国営公園の中から、特に人気のあるスポットをいくつか紹介します。
国営昭和記念公園(東京都立川市・昭島市)は、東京ドーム約39個分という広大な敷地を持つ公園です。
春の桜、夏のひまわり、秋のコスモスと紅葉、冬のイルミネーションなど、四季折々の花と緑を楽しむことができます。
また、サイクリングコースや水遊び場、バーベキュー広場など多彩な施設が整備されています。
国営ひたち海浜公園(茨城県ひたちなか市)は、春のネモフィラ(青い花)と秋のコキア(赤く紅葉する草)が特に有名な公園です。
「みはらしの丘」に広がる約450万本のネモフィラは「空と海が融合した青の絨毯」とも称され、国内外から多くの観光客が訪れます。
国営沖縄記念公園(沖縄県本部町・那覇市)は、海洋博覧会記念公園と首里城公園の2つの地区からなる公園です。
海洋博覧会記念公園には「美ら海水族館」があり、世界最大級のアクリルパネルを通して巨大なジンベエザメやマンタを観察することができます。
首里城公園では、沖縄の歴史と文化を象徴する首里城を見学することができます。
国営公園での楽しみ方
国営公園は、自然を楽しむだけでなく、様々な施設やイベントを通じて充実した一日を過ごすことができます。
多くの国営公園では、季節の花々が楽しめる花壇や庭園が整備されています。
特に春の桜、初夏のバラ、秋のコスモスなど、季節ごとに異なる花の風景を楽しむことができます。
家族連れに人気なのが、アスレチックや水遊び場などの子供向け施設です。
国営昭和記念公園の「子どもの森」や国営讃岐まんのう公園の「冒険の森」など、子どもが思い切り遊べる施設が充実しています。
また、多くの国営公園では、サイクリングコースが整備されており、レンタサイクルを利用して広大な園内を効率よく回ることができます。
さらに、季節ごとに様々なイベントが開催されるのも国営公園の魅力です。
春の花まつり、夏の水遊びイベント、秋の収穫祭、冬のイルミネーションなど、一年を通じて楽しめるイベントが目白押しです。
国立公園・国定公園・国営公園の違いを表で比較
ここまで説明してきた3つの公園の違いを、わかりやすく表にまとめました。
項目 | 国立公園 | 国定公園 | 国営公園 |
---|---|---|---|
根拠法 | 自然公園法 | 自然公園法 | 都市公園法 |
指定・設置者 | 環境大臣 | 環境大臣 | 国土交通大臣 |
管理者 | 国(環境省) | 都道府県 | 国(国土交通省) |
目的 | 優れた自然の風景地の保護と利用促進 | 国立公園に準ずる自然の風景地の保護と利用促進 | レクリエーションや文化活動の場の提供 |
数(2023年現在) | 34か所 | 56か所 | 17か所 |
土地所有 | 国有地・公有地・私有地の混在 | 国有地・公有地・私有地の混在 | 基本的に国有地 |
主な特徴 | 日本を代表する傑出した自然景観 | 地域の特色ある自然景観 | 整備された施設と多彩なアクティビティ |
公園選びのポイントと訪問時の注意点
それぞれの公園の特徴を理解したところで、どの公園を訪れるべきか、また訪問時にどのような点に注意すべきかについて解説します。
目的別おすすめの公園タイプ
訪問の目的に応じて、最適な公園タイプが異なります。
雄大な自然景観を楽しみたい方には国立公園がおすすめです。
特に富士箱根伊豆国立公園や中部山岳国立公園など、日本を代表する山岳景観を有する国立公園は、写真撮影や登山を楽しむのに最適です。
地域の自然と文化を同時に体験したい方には国定公園がおすすめです。
国定公園は地域の特色を活かした管理が行われており、自然だけでなく地域の文化や産業についても学ぶことができます。
家族連れやレジャー目的の方には国営公園がおすすめです。
国営公園は子供向け施設や飲食施設が充実しており、一日中楽しめるアクティビティが用意されています。
また、バリアフリー設備も整っているため、小さな子供連れや高齢者も安心して訪れることができます。
季節別の見どころと訪問のベストシーズン
それぞれの公園には、季節ごとの見どころがあります。
春(3月~5月)は花の季節です。
国立公園では高山植物の開花、国定公園では山桜や新緑、国営公園では桜やチューリップなどの花壇が見どころとなります。
特に国営昭和記念公園のチューリップや国営ひたち海浜公園のネモフィラは必見です。
夏(6月~8月)は避暑と水辺の活動に適した季節です。
国立公園や国定公園の高原や森林は涼しく過ごしやすく、渓流や湖でのアクティビティも楽しめます。
国営公園では水遊び場やプールが開放され、家族連れで賑わいます。
秋(9月~11月)は紅葉の季節です。
国立公園や国定公園の山々が色づく様子は圧巻で、特に日光国立公園や大山隠岐国立公園の紅葉は有名です。
国営公園ではコスモスやコキアなど秋の花々が見頃を迎えます。
冬(12月~2月)は雪景色と温泉の季節です。
国立公園や国定公園では雪山の景観やスキー、スノーシューなどのウィンターアクティビティが楽しめます。
国営公園ではイルミネーションイベントが開催されることが多く、幻想的な夜の景色を楽しむことができます。
訪問時の注意点とマナー
公園を訪れる際は、以下のような点に注意しましょう。
国立公園や国定公園では、自然保護のためのルールを守ることが重要です。
動植物の採取や持ち出しは禁止されていることが多く、特に特別保護地区では厳しく規制されています。
また、ゴミの持ち帰りは基本中の基本です。
特に山岳地帯ではゴミ箱が設置されていないことが多いため、自分で出したゴミは必ず持ち帰りましょう。
国営公園では、多くの来園者が快適に過ごせるよう、園内のルールに従うことが大切です。
特に混雑する季節やイベント時には、他の来園者への配慮を忘れないようにしましょう。
また、どの公園を訪れる場合も、事前に天候や交通情報、施設の営業状況などを確認することをおすすめします。
特に国立公園や国定公園の山岳地帯では、天候が急変することもあるため、十分な装備と情報収集が必要です。
まとめ:それぞれの公園の魅力を最大限に楽しもう
この記事では、国立公園、国定公園、国営公園の違いと特徴、魅力について詳しく解説してきました。
国立公園は日本を代表する傑出した自然景観を有し、厳格な保護体制のもとで守られています。
雄大な山岳、原生的な森林、美しい海岸線など、日本の自然の精髄を体験したい方におすすめです。
国定公園は国立公園に準ずる自然の風景地として、地域の特色を活かした管理が行われています。
地域の文化や産業と結びついた自然体験ができることが魅力で、より地域に密着した旅を楽しみたい方に適しています。
国営公園はレクリエーションや文化活動の場として整備された都市公園で、多彩な施設とアクティビティが魅力です。
家族連れやレジャー目的の方、また季節の花々を楽しみたい方におすすめです。
それぞれの公園には独自の魅力があり、訪問目的や季節によって最適な選択肢が変わってきます。
この記事を参考に、あなたの興味や目的に合った公園を選び、日本の自然と文化の豊かさを存分に楽しんでください。
最後に、どの公園を訪れる場合も、自然を尊重し、ルールとマナーを守ることで、美しい環境を次世代に引き継いでいくことの大切さを忘れないでください。
素晴らしい公園体験があなたを待っています。
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