「今の仕事をこのまま続けていいのだろうか」「転職するなら、何か資格を取ってから動いたほうがいい?」
転職を考え始めると、こんな疑問が出てきます。特に未経験の業界へ移りたい場合、資格があれば有利になるのでは、と考える人も多いでしょう。
ただし、最初に知っておきたいのは、資格を取れば年収が上がる、未経験でも転職できる、と単純には言えないことです。
資格によって役割は大きく違います。仕事に必須となるものもあれば、基礎知識を身につけるために役立つもの、一定の受験資格や実務経験が必要になるものもあります。
この記事では、未経験転職やキャリアチェンジを考えるときに候補になりやすい10の資格・試験を、IT、不動産、人事・労務、会計などの仕事別に整理しました。
「稼げる資格はどれ?」だけで選ぶのではなく、自分が進みたい仕事から逆算して資格を選ぶ方法を見ていきましょう。
資格を取れば高収入になるとは限らない
転職を考えて資格を探していると、「高収入資格」「稼げる資格」という言葉をよく目にします。
しかし、同じ資格を持っていても年収は同じではありません。
勤務先、職種、実務経験、役職、地域などさまざまな条件によって収入は変わります。資格はキャリアを作る一つの材料であって、年収を保証するものではありません。
そのため、資格選びでは「年収が高そう」という理由だけで決めるより、まず希望する仕事を考えることが重要です。
たとえばIT業界へ進みたいならIT系、不動産業界なら宅地建物取引士、人事・労務分野なら社会保険労務士というように、仕事から逆算すると候補を絞りやすくなります。
未経験転職で資格を選ぶ3つのポイント
まず確認したいのが、その資格と希望する仕事の関係です。
資格取得そのものが仕事の条件になるのか、転職前の基礎学習として利用するのかによって意味が違います。
次に確認したいのが受験資格です。
誰でも受験できる試験ばかりではありません。たとえば社会保険労務士試験には受験資格があり、学歴・実務経験・厚生労働大臣が認めた国家試験合格のいずれかの条件を満たす必要があります。
そして最後が、取得までに必要な時間と費用です。
難関資格に何年もかけることが、自分の転職目的にとって最適とは限りません。
資格取得をゴールにせず、その先の仕事まで考える。
これが資格選びで失敗しにくくする基本です。
1.ITパスポート|ITの基礎から学びたい人
IT業界やデジタル分野に興味はあるものの、「何から勉強すればいいか分からない」という人が検討しやすいのがITパスポート試験です。
ITパスポートは情報処理技術者試験の一つで、ITに関する基礎的な知識を問います。
IT専門職だけを対象とした試験ではなく、ITを活用する社会人として必要となる基礎知識を学べるのが特徴です。
2026年9月時点の受験手数料は7,500円です。
ただし、ITパスポートに合格しただけでITエンジニアとして働けるわけではありません。
エンジニア転職を目的とするなら、ITパスポートで基礎を学んだ後、希望職種に必要となる技術や実務的なスキルについても調べていきましょう。
2.基本情報技術者試験|ITエンジニアを目指すなら確認したい
ITエンジニア方面へ進みたい人なら、基本情報技術者試験も候補になります。
ITパスポートよりも技術者寄りの内容となるため、「ITについて広く知りたい」のか「ITエンジニアとして必要になる基礎を学びたい」のかで選び分けると分かりやすいでしょう。
2026年9月時点の受験手数料は7,500円です。
情報処理技術者試験については2026年度から試験制度に変更があるため、受験時にはIPAの最新情報を確認することが重要です。
資格取得だけで転職を判断するのではなく、プログラミングやインフラなど、自分が希望する職種で求められる能力も並行して確認しましょう。
3.AWS認定|クラウド分野を学びたい人
クラウド技術に興味があるなら、AWS認定も選択肢になります。
AWS認定には複数の試験があり、学習段階や役割によって選択する認定が異なります。
そのため、「AWS資格を取る」と一括りにするのではなく、自分がクラウドについて初めて学ぶ段階なのか、ITの基礎知識をすでに持っているのかを考えて選ぶ必要があります。
また、クラウドエンジニアなど技術職への転職では、資格だけでなく実際にサービスを操作した経験や周辺技術の知識も重要になります。
資格取得と実践的な学習をセットで考えたい分野です。
4.宅地建物取引士|不動産業界を考えている人
不動産業界への転職を考えているなら、宅地建物取引士、いわゆる宅建は確認しておきたい国家資格の一つです。
宅地建物取引業では、事務所などに一定数の専任の宅地建物取引士を置くことが法律で求められています。
そのため、単なる知識検定とは違い、不動産業務との関係が明確な資格です。
ただし、試験に合格することと、宅地建物取引士として登録・業務を行うことは同じではありません。実際に資格を仕事で使用する場合の登録などについても確認しておきましょう。
不動産業界への転職を具体的に考えている人ほど、取得目的を明確にしやすい資格です。
5.日商簿記|経理・会計分野を学びたい人
企業のお金の流れや会計について学びたい場合には、日商簿記が候補になります。
簿記は経理職だけでなく、会社の取引や財務諸表を理解するための基礎知識として学ぶこともできます。
未経験から勉強する場合、いきなり1級だけを見る必要はありません。
現在の知識と転職目的に合わせて、どの級から学習するのかを考えましょう。
また、「簿記を取得すれば未経験から必ず経理へ転職できる」という資格ではありません。
求人を見るときには資格条件だけでなく、実務経験や使用する会計ソフトなど、企業が求めている条件も確認してください。
6.FP技能士・AFP・CFP®|金融やお金の知識を深めたい人
ファイナンシャル・プランニング分野には、国家検定であるFP技能検定と、日本FP協会が認定するAFP・CFP®があります。
これらは同じ資格ではありません。
FP技能士には1級から3級があり、AFPにはAFP認定研修の修了と2級FP技能検定合格などの認定要件があります。
さらにCFP®資格審査試験は、原則としてAFP認定者など所定の受験資格が必要です。
つまり、未経験者が「上位資格だからCFP®から受けよう」と単純に選べる仕組みではありません。
金融、保険、資産形成などの分野に興味があるなら、資格体系を理解して、自分がどこから始められるのか確認しましょう。
7.社会保険労務士|人事・労務分野を深く学びたい人
人事、労務、社会保険などに関心がある場合に候補となる国家資格が社会保険労務士です。
ただし、誰でも無条件に受験できるわけではありません。
社会保険労務士試験には受験資格があり、「学歴」「実務経験」「厚生労働大臣が認めた国家試験合格」の3区分のうち、いずれか一つを満たす必要があります。
そのため、「未経験から社労士を目指したい」と考えたら、教材を買う前に自分が受験資格を満たしているか確認しましょう。
また、試験合格後に社会保険労務士として登録するための条件についても別途確認が必要です。
8.登録販売者|一般用医薬品販売に関わりたい人
ドラッグストアなど医薬品販売の仕事に興味があるなら、登録販売者も候補になります。
登録販売者試験は都道府県知事が実施します。
以前は一定の学歴や実務経験が受験資格として必要でしたが、2015年度以降は受験資格が撤廃されています。
ただし、ここで注意したいのが「試験に合格したら、その瞬間から条件なしですべて同じように働ける」という意味ではないことです。
一般用医薬品の販売・授与に従事するための登録や、店舗管理者などになるための実務・業務経験に関する条件があります。
試験合格だけでなく、取得後の制度まで確認しておきましょう。
9.中小企業診断士|経営を幅広く学びたい人
企業経営について体系的に勉強したい場合には、中小企業診断士があります。
経営戦略、財務・会計、企業経営理論など幅広い領域が試験対象になるため、短期間で気軽に取得するタイプの資格とは性質が異なります。
なお、2026年度から試験制度に変更があり、第1次試験の受験手数料は17,200円、第2次試験は15,100円となっています。
古い資格記事には以前の受験料が掲載されていることがあるため、これから受験する場合は最新年度の情報を確認してください。
「コンサルタントになれば高収入」と考えるのではなく、自分の現在の仕事や将来希望する職種に、経営知識をどう活かすのかを考えて選びたい資格です。
10.公認会計士・税理士|会計・税務の専門職を目指す人
会計・税務の専門職そのものを目指す場合には、公認会計士や税理士があります。
ただし、この2つを「高収入資格だから」という理由だけで選ぶのは慎重になったほうがいいでしょう。
どちらも専門性が高く、試験制度や資格取得までの要件を理解したうえで長期的な計画を立てる必要があります。
また、公認会計士と税理士では資格の役割も試験制度も異なります。
「会計系だから似ている」と一括りにせず、将来どのような仕事をしたいのかを先に調べ、その仕事に必要な資格を選びましょう。
TOEIC® L&Rは「資格」ではなく英語力を測る試験として考える
以前の記事ではTOEIC® L&Rを10位としていましたが、今回のリライトでは10資格のランキングから外しました。
TOEIC® L&Rは、合否によって資格を取得する試験ではなく、Listening & Readingの能力をスコアで示すテストだからです。
英語を使用する企業への転職などでスコアの提出を求められることはありますが、「730点なら年収アップ」「800点なら転職できる」といった一律の基準ではありません。
英語力が必要な仕事を希望する場合に、応募先企業が求める条件を確認したうえで受験を検討するとよいでしょう。
未経験なら「資格→転職」ではなく仕事から逆算する
ここまで10の資格・試験を見てきましたが、未経験転職で重要なのは資格の数ではありません。
まず「どんな仕事をしたいのか」を考えます。
ITエンジニアなのか、不動産なのか、経理なのか、人事・労務なのか。希望する方向が決まったら、実際の求人で求められている経験や資格を確認します。
そのうえで、
希望職種を決める → 求人条件を調べる → 必要な資格・スキルを確認する → 学習する → 応募する
という順番で進めると、資格取得そのものが目的になりにくくなります。
資格が必要ない仕事なら、資格試験に数百時間を使うより、実務に近いスキルを身につけたほうが目的に合うこともあります。
逆に、法律上の業務や企業の資格者設置義務と関係する資格であれば、取得する意味はより明確になります。
勉強時間は「○○時間で合格」と決めつけない
資格サイトでよく見かけるのが、「宅建300時間」「社労士1,000時間」のような学習時間です。
分かりやすい数字ですが、必要な学習時間は、その人が持っている知識、学習経験、勉強できる頻度などによって変わります。
公式機関が標準学習時間として示していない数字を、全員に共通する必要時間のように扱うのは避けたほうがいいでしょう。
学習計画を立てるなら、試験日と試験範囲を確認し、自分が1週間に確保できる時間から逆算するほうが現実的です。
独学・通信講座・スクールはどれを選ぶ?
資格が決まったら、次は勉強方法です。
費用を抑えたい場合は独学が候補になります。一方で、試験範囲が広い資格や初めて学ぶ分野では、通信講座やスクールを利用する方法もあります。
ここでも「通信講座なら合格しやすい」と単純に考える必要はありません。
教材内容、質問サポート、オンライン対応、受講期間、料金などを比較し、自分が続けやすい方法を選びましょう。
また、厚生労働省の教育訓練給付制度を利用できる講座もあります。すべての資格講座が対象になるわけではないため、利用を考えている場合は受講前に対象講座や支給要件を確認してください。
資格講座を選ぶ前に比較しておきたいこと
通信講座を利用するなら、料金だけで決めないことも大切です。
同じ資格を扱っていても、教材の形式、質問対応、模擬試験、スマホ学習への対応などはサービスによって違います。
まず取得したい資格を決め、その資格に対応した講座を2~3社程度比較すると選びやすくなります。
独学でも十分進められそうなら、無理に講座へ申し込む必要はありません。
反対に、「何から勉強すればいいか分からない」「一人では学習計画を作りにくい」という場合には、カリキュラムが用意された通信講座を比較してみる方法があります。
まとめ|「稼げる資格」より目指す仕事を決めよう
未経験から転職を考えると、「できるだけ年収が高くなる資格を取りたい」と思うかもしれません。
しかし、資格そのものが年収を決めるわけではありません。
IT、不動産、会計、人事・労務、金融など、分野によって資格の役割も大きく異なります。
だからこそ、最初に決めたいのは資格ではなく目指す仕事です。
希望する仕事を決める。求人や仕事内容を調べる。必要な資格やスキルを確認する。そのうえで資格取得が必要なら学習を始める。
この順番なら、「資格は取ったけれど、転職にはどう使えばいいの?」という状態を避けやすくなります。
まずは気になる仕事を2~3種類に絞り、それぞれの求人でどんな資格・経験が求められているのかを確認するところから始めてみてください。


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